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国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会

国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会から2名の調査官が来日、ジャニーズ問題で記者会見を開いたそうだ。国連人権委員会という組織は記憶にあるが、理事会とは何だろう...と少し調べてみた。

 

国連人権理事会
人権理事会(Human Rights Council)は、人権と基本的自由の促進と擁護に責任を持つ国連の主要な政府間機関で、60年間にわたって活動してきた「人権委員会(Commission on Human Rights)」に代わる機関として2006年に総会によって設置された。理事会は人権侵害に取り組み、それに対応する勧告を行う(「国連の基礎知識」(国連広報センター)より)...ということで、かつての人権委員会を2006年に改組したもののようだ。

 

理事国は3年の任期で選出され、2022年10月11日の国連総会では新たに12カ国が選出された。深刻な人権侵害を告発されていたベネズエラは再選されなかったが、今回選出された理事国のうち「スーダンバングラデシュベトナムなど7カ国」は、(国連報告書によると)過去に人権擁護者に報復した事実がある。人権理事会は高尚な道徳的権威ではなく、国家の集まりであり、政治の駆け引きの場...という割り切った考え(フェリックス・キルヒマイヤー)もあるようだ。

 

ジャニーズ問題

この人権理事会が、ジャニーズ問題について、日本政府に対応を求めたとされる*1が、これは「法治国家」としては無理があろう。という訳で、カトリック教会による性的虐待事件について、欧米ではどのような形で責任を追及しているか調べてみた。

 

フランス・カトリック教会の性的虐待事件についての対応

比較的最近の案件である「フランス・カトリック教会による性的虐待事件」は以下のように対応されている。

  1. フランス・カトリック教会が委託した「独立調査委員会」(医師や歴史学者社会学者、神学者らで構成)が2018年に設立された。
  2. 約2年半、6,500人以上の被害者や目撃者への聞き取り調査を実施、これに教会や裁判所、警察の記録を加えて、2021年に2,500ページの最終報告書が作成された。
  3. 報告書には、存命する教会関係者の中に疑惑の人物がいることも付け加えられているが、訴追の対象*2となったのは、時効が成立していない「22件」のみだった。

被害者には同情のほかないが、このように何年も前の事件では、疑惑を受けた当該団体がコーポレートガバナンス能力を発揮して、自ら調査、告発・処罰・反省あるいは補償・賠償すべきで、民主国家で法的根拠なく他人(or 法人)を罰することはできない。政府が強権を発動できるのは独裁国家で、今回の調査官がタイとナイジェリアの人であったことが、強権を許容する考え方を示すのなら、国連職員としては危険に感じる。

 

www.bbc.com

 

国連人権理事会の新疆ウイグル自治区への対応

(スイスの視点 2022/10/25 より)

2022年8月にミシェル・バチェレ前国連人権高等弁務官が新疆ウイグル報告書を発表したことで、国連人権理事会がこの問題に対処できると期待されたが、人権理事会は中国・新疆ウイグル自治区の人権侵害問題について討議を求める決議案を「反対19票、賛成17票、棄権11票で」否決した。インドネシアカタールなどのイスラム協力機構(OIC)の数カ国や、中東・アフリカ諸国などが反対票を投じた。インド、ブラジル、メキシコなど民主主義国とされる国々の中にも棄権した国があった。(2021年まで)人権理事会で決議案を否決したことはなく、2021年にイエメン内戦の人権侵害疑惑を調査する専門家グループの更新を拒否したのが初めてだった。今回は「2回目の決議案拒否」になるが、人権理事会が、道徳的権威を失ったのではないかと疑問視する声も出ている。

 

www.swissinfo.ch

*1:調査官の実際の発言については確認できていないが、日本政府に対応を求めたと「報道」されている。

*2:実際に検察が動いたかどうか、裁判で有罪判決が出たかどうか、については確認できていない。